酒ディプロマ二次テイスティング対策|日本酒・焼酎の比較練習と時間配分
この記事を監修
平沼柊哉
酒学道場 代表・J.S.A.正会員
この記事の結論
- SAKE DIPLOMA二次試験テイスティングは、試験時間30分で日本酒4種・焼酎2種の計6種をブラインド評価し、マークシート方式の用語選択用紙に記入する形式です。
- 銘柄を当てるのではなく、日本酒は「アルコール添加」「酒米」「酒母」「酵母」の4軸、焼酎は「原料」「蒸留方法」「アルコール度数」の3軸で論理的に判別します。
- テイスティング用語の選択は個人の感覚表現ではなく、日本ソムリエ協会(J.S.A.)の基準用語に沿って各酒質の典型的な特徴を結びつけて回答します。
- 8週間の学習計画例に基づき、1回に評価する軸を絞って20〜30本程度の比較テイスティングを行うことで、独学でも試験水準の判別力を養えます。
この記事の対象読者
- SAKE DIPLOMAの一次試験を通過し、二次試験のテイスティング対策を具体的に進めたい方
- スクールに通わず、独学で日本酒と焼酎の官能評価スキルを身につけたい方
- ブラインドテイスティングで何を基準に判断すればよいか分からず困っている方
- 焼酎の原料や蒸留方法の判別手順を整理したい方
SAKE DIPLOMA二次試験のテイスティングは、試験時間30分のあいだにブラインドで供出される日本酒4種と焼酎2種を評価し、所定のマークシート用紙から該当する外観・香り・味わいの用語や製法を選択して回答する実技審査です。
出題されるお酒の銘柄そのものを当てる試験ではありません。供出された酒がどのような原料で、どのような酵母や酒母を用いて造られ、アルコール添加がされているかどうかを、グラスの中の液体から論理的に読み解く力が問われます。
感覚や勘に頼って「何となく純米大吟醸のようだ」と全体像から推測しようとすると、試験本番の緊張感の中で判断がブレてしまいます。合格水準に達するために必要なアプローチは、製法に関わる「明確な判別軸」をあらかじめ頭に構築し、1つの軸ごとに順番にグラスを評価していくことです。
試験の構成から日本酒・焼酎の具体的な見極め手順、マークシート選択の考え方、8週間で取り組む独学の練習計画例までを詳しく整理しました。
テイスティング審査は30分で6種を評価する構成です

二次試験は、テイスティング審査(30分)と論述試験(20分)を合わせて実施します。着席した状態で両方の試験が行われますが、まずテイスティング用紙が回収され、その後に論述試験へ進む流れが一般的です。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 試験時間 | テイスティング30分、論述20分 | テイスティング終了後に用紙回収 |
| 評価対象(日本酒) | 練習例:4種類 | 外観、香り、味わい、特定名称、製法特徴 |
| 評価対象(焼酎) | 練習例:2種類 | 主原料、蒸留方法、アルコール度数 |
| 解答形式 | マークシート方式(用語選択用紙) | 該当する記号・番号を塗りつぶす |
| 配点・合格ライン | 公式には非公表 | 論述試験を含めた総合評価 |
以下では、日本酒4種類・焼酎2種類を使う30分の練習例を示します。本番の点数を保証するものではありません。1種類あたりに使える時間は単純計算で5分程度しかありません。マークシートを丁寧に塗りつぶす時間や、最後の見直し時間を考慮すると、1種類のお酒を分析する時間は実質3〜4分です。
J.S.A.は各問の配点や合格基準点の詳細を公表していません。配点の細かな数字を気にするよりも、出題される主要な設問項目で確実に根拠を持った解答を選べる状態を作ることが大切です。
日本酒と焼酎で問われる主要な設問項目
日本酒4種に対しては、外観の色調や清涼度、香りの第一印象や具体的な特徴香、味わいの甘味・酸味・苦味・余韻を用語群から選ぶテイスティングコメントに加えて、次のような製造工程・分類に関する直接的な設問が設けられます。
- アルコール添加がされているもの(特定名称における純米系か本醸造・吟醸系か)
- 生酛系酒母(生酛または山廃酛)が使用されているもの
- セルレニン耐性酵母(カプロン酸エチル高生産性酵母)が使用されているもの
- 特定の酒米(山田錦、五百万石、雄町など)が主原料として使用されているもの
- 該当する特定名称(純米大吟醸酒、純米吟醸酒、純米酒、本醸造酒など)の選択
焼酎2種に関しては、日本酒ほど細かな香りの単語選択は求められず、骨格となる物理的・製法的な属性の特定が中心です。
- 主原料の判別(芋、麦、米、黒糖、そば、酒粕、泡盛などの区分)
- 蒸留方法の判別(常圧蒸留か、減圧蒸留か)
- アルコール度数の判別(20度、25度、35度前後などの度数帯)
このように、審査の対象となる論点は決まっています。日本酒で4つの評価軸、焼酎で3つの評価軸を正確に捉えられるようになれば、限られた試験時間の中でも迷わずマークを進めることが可能です。
日本酒を見極める4つの判別軸

ブラインドでグラスを前にしたとき、最初から「これは純米吟醸酒だ」と結論を出そうとすると判断を誤りやすくなります。特定名称は製法の組み合わせの結果に過ぎないからです。
日本酒の判別は、アルコール添加の有無、使用酒米、酒母の種類、酵母の特性という4つの要素を個別に切り離して検証する手順を踏みます。1つの要素ずつ証拠を集めていくことで、最終的な特定名称の選択まで論理的に導くことができます。
判別軸1:アルコール添加の有無を後味のキレで捉える
アルコール添加(アル添)の有無を見極めることは、純米系か本醸造・大吟醸系かを二分する最初の関門です。
醸造用アルコールを適量添加する技術は、香りの成分を引き出し、酒質をすっきりと引き締めるために用いられます。そのため、テイスティングにおいては香りと後味のキレに明確な違いが現れます。
| 項目 | アルコール添加酒の特徴 | 純米酒の特徴 |
|---|---|---|
| 香りの立ち方 | やや揮発性のあるシャープな立ち上がり、アルコール感 | 米由来のふくよかな甘み、穏やかな穀物香 |
| 口当たり | 軽快でなめらか、滑るようなアタック | 厚みがあり、舌の上にしっかりとした重みが乗る |
| 味わいの中盤 | サラリとしていて重さを残さない | 米の旨味やアミノ酸のふくらみが広がる |
| 余韻(アフター) | 短く直線的、スッと切れるような収束 | 旨味と酸味が長く口の中に残り、じんわり持続する |
アル添酒を捉える最大のポイントは「後味の引きの早さ」です。口に含んで飲み込んだ(あるいは吐き出した)あと、舌の上に旨味の重厚感が長く残るか、それともアルコールの揮発感とともにサッと消えていくかを観察します。
1種類だけを単独で飲むと判断に迷うことがありますが、複数のグラスが並んでいる本番では、互いの余韻の長さを比較することでキレの鋭いアル添酒を浮き彫りにすることができます。
判別軸2:主要3大酒米の骨格とテクスチャーの違い
酒米(酒造好適米)の品種を当てる設問では、性質の異なる代表的な3品種が中心的な比較対象となります。全国で最も生産量の多い「山田錦」、新潟をはじめとする日本海側で広く使われる「五百万石」、岡山県を中心に栽培される歴史ある「雄町」の3つです。
それぞれの米が持つデンプン構造や溶けやすさの違いは、お酒のボディ感、酸の質、味わいの幅となってグラスに現れます。
| 酒米 | 主な産地・特性 | 味わいの骨格 | テイスティングにおける着眼点 |
|---|---|---|---|
| 山田錦 | 兵庫県など。心白が大きく溶けやすい | バランス型、上品で緻密 | 特定の要素が突出しすぎず、ふくよかさと上品なまとまりがある |
| 五百万石 | 新潟県・北陸など。心白が硬めで溶けにくい | 淡麗辛口、軽快で直線的 | 味の線が細身ですっきりしており、余韻がドライに短く終わる |
| 雄町 | 岡山県など。米が非常に柔らかく溶けやすい | 芳醇多旨、太く野性的 | 旨味が濃密でボリュームがあり、酸がしっかりとして幅が広い |
五百万石は「線の細さと硬質なキレ」が際立ちます。冷涼でクリアな印象を与え、余計な甘味や重さを残しません。
対照的に雄町は「味わいの厚みと野性味」を持ちます。口に含んだ瞬間に横に広がるような旨味の重層感があり、酸味も力強く存在感を示します。
山田錦はその中間に位置し、ふくよかなボリューム感を持ちながらも、全体のバランスが崩れず洗練された円熟味を感じさせます。極端に軽快なら五百万石、極端にどっしりとして酸と旨味が強ければ雄町、完成度の高い均整が取れていれば山田錦という視点で絞り込みます。
判別軸3:酒母の製法(速醸系 vs 生酛系)
酒母の造り分けは、お酒に含まれる有機酸の組成と香りのニュアンスに大きな違いをもたらします。
人工の醸造用乳酸を添加して短期間で安全に酵母を育てる「速醸系酒母」に対し、自然界の乳酸菌を呼び込んでじっくり時間をかけて育成する「生酛系酒母(生酛・山廃酛)」では、蓄積されるアミノ酸やコハク酸、乳酸などのバランスが異なります。
速醸系のお酒は、香りがクリーンで雑味が少なく、酸味もシャープで直線的です。近年の吟醸酒や大吟醸酒の多くはこの手法で造られており、クリアで端正な印象を与えます。
一方の生酛・山廃酛のお酒は、乳酸菌の働きによって生成された複雑な香味成分が特徴です。
- 香りにヨーグルト、サワークリーム、チーズ、バターといった乳製品様のニュアンスが感じられる
- 穀物、蒸した米、キノコ、干し草のような奥行きのある香りが混ざる
- 酸味が太く重層的で、舌の奥を刺激して豊かな余韻を形成する
- 液体の色調がわずかに黄色やゴールドを帯びている場合がある
香りをかいだ瞬間に、爽やかな乳酸飲料や発酵バターを思わせるクリーミーな香気成分が立ち上がってくる場合は、生酛系酒母の可能性を強く疑います。速醸系からはこうした濃厚な乳製品香は基本的に生じないため、香りの第一印象で特定しやすい重要な軸です。
判別軸4:酵母の特性(カプロン酸エチル vs 酢酸イソアミル)
吟醸香と呼ばれる華やかな果実香は、酵母が発酵の過程で生み出すエステル類によるものです。この吟醸香には、大きく分けて「カプロン酸エチル」と「酢酸イソアミル」の2つの主要成分があります。
セルレニン耐性酵母をはじめとする現代的な高香気酵母は、カプロン酸エチルを際立って多く生成します。
| 香気成分 | 代表的な香りの表現 | 主な酵母系統 | 温度や時間による変化 |
|---|---|---|---|
| カプロン酸エチル | リンゴ、洋ナシ、パイナップル、アニス | きょうかい1801号、M310、各地のバイオ開発酵母 | 低温でも華やかに立ち、グラスに入れた直後から強く香る |
| 酢酸イソアミル | バナナ、メロン、白桃、キャンディ | きょうかい9号、14号、7号系 | 落ち着いた品のある香りで、温度が上がるとふくらみが増す |
試験において「セルレニン耐性酵母を使用したもの」を特定する設問がある場合、グラスを近づけた瞬間に鮮烈なリンゴや青リンゴの香りが漂ってくるかどうかが決定打になります。
酢酸イソアミル系の酵母は、バナナを思わせるまろやかで落ち着いた甘い香りを放ちます。注ぎたての冷たい状態よりも、室温に馴染んで少し時間が経ったタイミングで香りが開きやすい性質を持っています。
読む(インプット)
情報を入れるだけでは
神経回路は強化されない
記憶定着率:低い
思い出す(アウトプット)
思い出す作業によって
神経回路が強化される
記憶定着率:高い
日本酒の評価では、まず外観を見て、香りをかぎながら「酵母(カプロン酸系か酢酸イソアミル系か)」と「酒母(速醸のクリーンさか生酛系の乳酸香か)」を確認します。そして口に含んで「酒米(骨格の太さ・軽さ)」と「アル添の有無(後味のキレ)」を確かめるという順序を徹底します。
焼酎を見極める3つの軸

焼酎も、原料の違いを確かめながら練習しておきます。日本酒のように細かなテイスティング用語を大量にマークする必要はなく、主に原料、蒸留方法、アルコール度数の3点を正確に識別することが求められます。
各要素の判別ルールを整理しておけば、試験当日の貴重な得点源にすることができます。
軸1:主原料ごとの固有香を整理する
本格焼酎(単式蒸留焼酎)は、使用する主原料によって特徴的な香気成分が明確に分かれます。試験対象となる主要な6つの区分を押さえます。
| 原料区分 | 香りの顕著な特徴 | 判別のキーワード |
|---|---|---|
| 芋焼酎 | 加熱したサツマイモの甘い香り、テルペン類の華やかさ | ふかし芋、ライチ、柑橘、甘い油感 |
| 麦焼酎 | 麦茶や炒った穀物の香ばしさ、すっきりしたトーン | 香ばしい穀物香、麦茶、トースト |
| 米焼酎 | 炊いた米の上品な香り、吟醸酒に近いクリーンな印象 | 吟醸香、すっきりした米の甘み、端正 |
| 黒糖焼酎 | 黒糖やカラメルのような濃厚でメロウな甘い香り | サトウキビ、黒蜜、ラム酒を思わせる甘さ |
| そば焼酎 | 穏やかでやや粉っぽい穀物香、ニュートラルな口当たり | そば湯、軽いナッツ、癖の少ない素朴さ |
| 泡盛 | 黒麹とタイ米由来の重厚感、熟成による複雑なオイリー香 | マツタケ、マッシュルーム、油様、厚いコク |
多くの受験生が迷いやすいのが「芋」と「泡盛」の区別です。どちらもどっしりとしたコクを持ちますが、芋焼酎はサツマイモ特有の甘く華やかな芳香が前面に出ます。
対して泡盛は、全量タイ米と黒麹で仕込まれるため、黒麹菌の代謝産物に由来するキノコ(マツタケ様)やスパイシーな重厚さ、独特の油分を含んだ香りが芯にあります。このキノコ様の香りを見つけられるかどうかが泡盛識別の決め手です。
また、米焼酎と減圧蒸留の麦焼酎も軽快さにおいて似通うことがありますが、麦特有のわずかな香ばしさがあるか、清酒に近い米のふくらみがあるかで整理します。
軸2:蒸留方法(常圧蒸留 vs 減圧蒸留)
蒸留工程において気圧をコントロールするかどうかで、液体に移行する香気成分と雑味の量が劇的に変化します。
| 蒸留方法 | 蒸留器内の気圧と沸点 | 仕上がりの香味特性 | 代表的な酒質スタイル |
|---|---|---|---|
| 常圧蒸留 | 通常気圧(1気圧)、約85〜95℃で沸騰 | 原料の個性が濃厚に抽出される。重厚でオイリー、複雑味がある | 伝統的な芋焼酎、麦焼酎、泡盛全般 |
| 減圧蒸留 | 減圧(気圧を下げる)、約45〜55℃で沸騰 | 沸点が低いため熱劣化や雑味が少ない。フルーティで軽快 | 現代的な麦焼酎、米焼酎、飲みやすいタイプ |
常圧蒸留は原料を高温で煮沸するため、高沸点の芳香成分や油分がしっかり抽出されます。そのため、グラスから漂う香りは力強く、原料そのものの野性味やスモーキーさ、重層的なコクを感じます。
減圧蒸留は、富士山の山頂でお湯が低温で沸くのと同じ原理を利用して、低温でアルコールを蒸留します。熱による原料の焦げ臭や重い油分が抽出されず、エステル類を中心としたフルーティで華やかな香りと、透明感のあるサラリとした口当たりに仕上がります。
口に含んだときに「原料の油分や重厚な余韻がズシリと残る」なら常圧蒸留、「雑味がなく非常にクリーンですっきり抜ける」なら減圧蒸留と判断します。
軸3:アルコール度数(刺激感の強度)
焼酎のアルコール度数は、舌への刺激の強さと揮発感で測ります。一般的に流通している焼酎の度数帯は以下の3つに分かれます。
- 20度:口に含んだときのアタックが柔らかく、アルコールのツンとした刺激がほとんどない。宮崎県などで親しまれるマイルドなタイプ
- 25度:本格焼酎の最も標準的な度数。適度な辛みとボリューム感があり、口内でアルコールがしっかりと主張する
- 30〜35度以上:原酒や一部の泡盛、高級銘柄に見られる。舌に乗せた瞬間にピリピリとした熱い刺激があり、喉を通るときに強い温感を生じる
度数を確かめるときは、一気にたくさん口に含むと舌が麻痺してしまうため、グラスの液体を一滴か二滴だけ舌先と中央に乗せるようにします。舌粘膜に対する収斂味と熱感の立ち上がり方に集中することで、度数帯を判別しやすくなります。
用語選択シートの記入ポイント
マークシートに並ぶ用語は、受験生が日頃使う自由な感想とは異なります。日本ソムリエ協会が設定している模範的なテイスティング用語の枠組みに沿って、お酒の典型的なスタイルを表現する語句を選ぶ姿勢が大切です。
特定名称ごとの典型的なフレーズの傾向
特定名称やお酒の設計意図に合わせて、選択されやすい用語の組み合わせには一定の方向性があります。目の前のお酒がどのタイプに属するかを見極めたら、そのタイプに矛盾しない調和のとれた用語群を意識します。
純米大吟醸酒(山田錦・セルレニン耐性酵母想定)
華やかで洗練された最高峰の吟醸造りを想定したセットです。
- 外観:澄んだ、輝きのある、淡いプラチナゴールド、シルバーがかった
- 香り(第一印象):華やかな、若々しい、芳醇な
- 香り(特徴):リンゴ、洋ナシ、パイナップル、白桃、白い花、セルフィーユ
- 味わい:上品な甘味、なめらかな、きめ細やかな、長い余韻、調和のとれた
本醸造酒または普通酒(アルコール添加・速醸想定)
すっきりとしたキレ味と食事に合わせやすい軽快さを想定したセットです。
- 外観:無色に近い、透明感のある、クリスタル
- 香り(第一印象):軽快な、控えめな、爽快な
- 香り(特徴):米粉、つきたての餅、白胡麻、ミネラル、青竹
- 味わい:みずみずしい、シャープな、ドライな、キレのある、余韻は短め
生酛・山廃純米酒(雄町または一般米・熟成感想定)
コクと酸味が豊かで、伝統的な製法による力強い味わいを想定したセットです。
- 外観:やや濃い、黄色みを帯びた、黄金色、トパーズ
- 香り(第一印象):複雑な、熟成感のある、力強い
- 香り(特徴):ヨーグルト、サワークリーム、干しキノコ、煎った米、干し草、クローブ
- 味わい:豊かな旨味、力強い酸味、ふくよかな、コクのある、長い余韻
用語選択で避けるべき安全策
用語選択用紙には、「極めて強い」「非常に重い」といった両極端な表現も含まれています。しかし、一般的な試験で供出されるお酒は、極端な欠陥酒や過度に変質した古酒が出ることはまずありません。
突出した確信がない限り、極端な最上級表現は避け、中庸からやや明確な表現(「やや強い」「なめらかな」「爽快な」など)を選定する方が無難です。
また、香りで「リンゴ」を選んでいるのに、味わいで「重厚で力強い苦味」を選ぶといった、酒質全体として辻褄が合わないマークの仕方は減点につながりやすくなります。外観、香り、味わいが一本の線でつながるように用語を整える意識を持ってください。
独学で進める8週間の学習計画例

一次試験を通過してから二次試験までは、およそ2ヶ月(約8週間)の準備期間があります。限られた時間の中で感覚を研ぎ澄ますための、週ごとの具体的な学習計画例を提示します。
第1〜2週:用語選択用紙の語彙を頭にインプットする
最初の2週間は、お酒をたくさん飲む必要はありません。まず公式のテイスティング用語選択用紙を手元に用意し、そこに印刷されているすべての単語の意味を正確に把握します。
- 外観の用語(清澄度、色調の深さ、色味のニュアンス)
- 香りの第一印象の言葉(華やかな、軽快な、落ち着いた、複雑ななど)
- 香りの各カテゴリー(果実、花、草木、穀物、乳製品、スパイス、熟成など)
- 味わいの各要素(アタック、甘味、酸味、苦味、テクスチャー、余韻の長さ)
「セルフィーユ」「つきたての餅」「上新粉」「バター」といった表現が、それぞれ日本酒のどのような製法や状態を指しているのかを教本で照合します。言葉の定義があいまいなままテイスティングをしても、シートのマークには結びつきません。
第3〜4週:4つの判別軸を1つずつ検証する
この期間から実際に日本酒を購入して飲み比べを始めます。大切なのは、1回のテイスティングで検証する軸を1つだけに限定することです。
- 前半のテーマ「アル添 vs 純米」:同じ蔵が造る本醸造と純米酒を用意し、後味のキレと余韻の長さの差だけを何度も往復して確かめる
- 後半のテーマ「速醸 vs 生酛・山廃」:速醸の純米酒と生酛仕込みの純米酒を用意し、香りの乳製品様ニュアンスと酸の質の違いに集中する
- 次のテーマ「酵母の違い」:カプロン酸エチル系の純米吟醸酒と、酢酸イソアミル系の純米酒または本醸造を並べ、リンゴ香とバナナ香の立ち方を嗅ぎ分ける
- 米の比較:山田錦仕込みの酒と五百万石仕込みの酒を用意し、味の線の太さとキレを比べる
1つの軸に絞って比較することで、脳の中にその要素特有の感覚基準がしっかりと刻まれます。
第5〜6週:4種を同時に並べる実践比較トレーニング
個別の軸が理解できたら、練習例として異なるタイプの日本酒4種類を卓上に並べます。
- 4本すべてにブラインド用のカバー(アルミホイル等)を巻く
- マークシートのコピーを用意し、タイマーを20分にセットする
- 4本の中で「最もアル添らしいもの」「最も生酛系らしいもの」「最もカプロン酸香が強いもの」を比較しながら探す
- 各ボトルの外観・香り・味わいをシートにマークする
- 答え合わせを行い、なぜその用語を選んだのか、なぜ外れたのかを振り返る
単体でテイスティングするのと、4本並べて相対的に比較するのとでは感覚の使い方がまったく異なります。複数本を同時に見比べる感覚にこの2週間で慣れておきます。
第7週:焼酎の集中判別トレーニング
第7週は焼酎に集中します。小瓶(200〜300ml程度)で芋、麦(常圧・減圧)、米、黒糖、そば、泡盛の主要ボトルを揃えます。
まずは常温のままストレートで少量ずつ香りをかぎ、原料ごとの固有香を整理します。特に「泡盛特有のキノコ香」と「芋の甘香」の境界線、そして「減圧麦のクリーンさ」と「米焼酎の吟醸様」の違いを重点的に確認します。
次に、スポイト等を使って舌に少量乗せ、25度前後の標準的な度数と、原酒に近い高めの度数の刺激の差を体験しておきます。
第8週:本番同様のタイムトライアル
試験直前の最終週は、試験本番とまったく同じ環境を作って総合演習を行います。
- 日本酒4種類と焼酎2種類をグラスに注ぐ
- マークシート用紙と筆記用具だけを机に置く
- タイマーを厳密に30分にセットしてスタートする
- 終了の合図とともに鉛筆を置き、マークの塗り忘れや論理的な矛盾がないか点検する
30分という時間の短さと、解答のペースを身体で覚えることが最大の目的です。シミュレーションを2回から3回経験しておくだけで、当日の焦りを大幅に減らすことができます。
当日の30分を乗り切る実践手順
試験当日は、緊張や周囲の筆記音で冷静さを失いやすくなります。あらかじめ決めておいたタイムテーブル通りに行動することがミスを防ぐ唯一の方法です。
推奨される30分の時間配分
| 経過時間 | 実施内容 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 0〜4分(4分間) | 全6種類の香りを一巡してメモする | 全体のマッピング。「1番=華やか」「3番=乳製品」「5番=芋」など |
| 4〜16分(12分間) | 日本酒4種の外観・香り・味わいの記入 | 1種類あたり3分ペース。特徴香を規定数マークする |
| 16〜22分(6分間) | 日本酒の特定名称・製法設問の解答 | アル添、酒母、酵母、酒米の設問に印をつける |
| 22〜27分(5分間) | 焼酎2種の全項目解答 | 原料、蒸留方法、度数を手早く特定してマーク |
| 27〜30分(3分間) | 最終見直しとマーク漏れの確認 | 塗り忘れ、マークのズレ、設問ごとの選択数超過がないか確認 |
開始の合図とともに1番のグラスから順に細かくマークし始めてはいけません。最初に全グラスの香りを浅くかぎ、6種類の「大まかな地図」を脳内に作ることが極めて効果的です。
「全体の中で一番フルーティなのはどれか」「明らかに生酛系がいるか」「焼酎の原料は何と何か」を最初の数分で把握しておけば、個別のテイスティングに入った際に迷う時間が激減します。
嗅覚と味覚のリセット方法
アルコール度数の高いお酒を何種類も口に含むと、舌の味蕾と鼻の粘膜は徐々に疲労し、感度が低下します。
- 各グラスの合間に必ず用意された水を一口含み、軽く口内をすすぐ
- 審査中に供出されたお酒をすべて飲み干さない(吐器が用意されている場合は適切に吐き出す)
- 鼻が疲れたときは、自分の服の袖口(無香料の布)や腕の内側の匂いを嗅いで嗅覚の基準点を戻す
試験会場では緊張から喉が渇きがちですが、冷たい水を一気に飲むと舌の感覚が冷えて鈍くなります。常温に近い水を少量ずつ口に転がすように使ってください。
判断に迷ったときの選択基準
試験中に「これは純米吟醸か、それとも純米大吟醸か」「五百万石か山田錦か」と二者択一で完全に立ち止まってしまうことがあります。
そうした状況に陥ったときは、最初に直感で感じた方の選択肢を維持するのが鉄則です。テイスティング試験では、考え込みすぎて深読みした修正ほど裏目に出る傾向があります。
また、特定名称などの設問に迷っても、香りと味わいのマークシート用紙にすでに自分が記入した用語群を見返してください。もし自分が「洋ナシ」「華やかな」「なめらかな」とマークしているなら、特定名称もそれに素直に従って吟醸系を選ぶべきです。自分の書いたテイスティングコメントと結論の整合性を崩さないことが重要です。
独学者が陥りやすい4つの落とし穴
独学で対策を進める過程では、努力の方向性を誤ってしまうパターンがいくつか存在します。あらかじめ失敗の典型例を知っておくことで、無駄な出費と混乱を防ぐことができます。
1. 飲む銘柄数をむやみに増やしすぎる
「合格するためには100本以上飲まなければならない」と思い込み、次々と新しい銘柄を買っては一口飲んで終わるような学習方法は非効率的です。
人間が香味の記憶を定着させるためには、同じお酒を時間を空けてもう一度確認し、温度変化による挙動を観察する作業が必要です。必要な本数は20〜30本程度で十分です。同じ銘柄を「注ぎたて」「10分後」「少し温度が上がった状態」と観察し尽くす方が、はるかに深い判別力が身につきます。
2. 個人的な嗜好で評価してしまう
「自分が好きなお酒かどうか」という感情は、試験においては完全に排除しなければなりません。
自分が個人的に苦手なタイプのお酒であっても、それが試験基準において「典型的な生酛純米酒の美点」を備えているのであれば、教本に沿った肯定的な表現用語を選択する必要があります。主観的な好悪ではなく、客観的な香味パラメータを測定する測定器になったつもりでグラスに向き合ってください。
3. 用語を自分のオリジナルの言葉で捉えようとする
ワインや日本酒に親しんでいる人ほど、「この酒は初夏の青空のような透明感がある」といった情緒的な表現や、選択肢にない独自の果実名を連想しがちです。
しかし、マークシート用紙にない言葉をいくら頭に思い浮かべても1点にもなりません。常に思考を用語シートのリストに引き戻し、「この香りはシート上の選択肢で言えば『白桃』なのか『メロン』なのか」という変換作業を日常の練習から徹底してください。
4. 直前期に普段と違う特殊な酒を試す
試験の直前になって不安になり、貴醸酒や長期熟成古酒、低アルコール原酒、特殊な酵母を使った珍しい限定酒などを買い集めて飲むのは避けるべきです。
本番で問われるのは、日本の酒造りの根幹をなす王道的な酒質設計の理解です。直前期こそ、標準的な純米酒、本醸造酒、純米大吟醸酒といった基本設計のお酒に戻り、基準となる感覚の目盛りを正確に校正しておく必要があります。
よくある質問
酒ディプロマ二次試験テイスティングの形式は?
2026年度のテイスティング試験は30分です。出題される酒類の点数や解答方法は、受験年度の公式案内と当日の指示を確認してください。外観・香り・味わいを観察し、設問に沿って回答する練習を重ねます。
テイスティング対策は独学でも進められますか?
独学でも十分に対策可能です。やみくもに銘柄を当てる練習をするのではなく、アルコール添加、酒米、酒母、酵母といった評価軸を1つずつ独立させて比較する訓練を行い、用語選択シートの表現と香りの結びつきを整理することが有効です。
テイスティングでよく問われるポイントは何ですか?
日本酒ではアルコール添加の有無、生酛・山廃系酒母の使用、セルレニン耐性酵母の使用、主要酒米(山田錦・五百万石・雄町)の特徴判別などが定番の出題論点となっています。焼酎では原料(6種類)、蒸留方法(常圧・減圧)、アルコール度数の見極めが問われます。
カプロン酸エチルと酢酸イソアミルの香りはどう見分けますか?
カプロン酸エチルはリンゴや洋ナシを思わせる華やかな吟醸香で、セルレニン耐性酵母などに多く見られます。酢酸イソアミルはバナナやメロンのような穏やかで落ち着いた果実香が特徴です。グラスに注がれてからの時間経過や温度変化による香りの立ち方の違いにも着目します。
論述試験とテイスティングの配点や合格基準は公表されていますか?
日本ソムリエ協会(J.S.A.)から配点や合格基準点は公表されていません。二次試験はテイスティングと論述の両方が実施され、総合的に審査されます。どちらか一方に偏ることなく、双方の準備を整えておくことが大切です。
酒学道場で二次試験の知識基盤を強固にする
テイスティングでグラスから得た感覚を正解のマークに変換するためには、一次試験で学習した製法の理論が欠かせません。
「なぜこの酒米は余韻が短いのか」「セルレニン耐性酵母がどのような香気物質を生み出すのか」「生酛系酒母で乳酸菌がどのように遷移するのか」という醸造メカニズムが頭に入っていて初めて、グラスの中のわずかなサインを自信を持って特定の選択肢に結びつけることができます。
オンライン学習サービスの「酒学道場」では、SAKE DIPLOMAの一次試験対策として設計された豊富な問題演習を通じて、醸造理論や特定名称の規定、酒米の性質を徹底的に定着させることができます。
一次試験で培った知識の土台をより強固なものにし、二次試験のテイスティング審査や論述試験で揺らがない判断軸を築くための復習ツールとして、ぜひ日々の学習にご活用ください。
一次の復習から二次の理論強化まで!「酒学道場」で合格を目指す
まとめ:判別の設計図を手に試験へ挑む
SAKE DIPLOMA二次試験のテイスティングは、天性の鋭い味覚を競う場ではありません。日本酒と焼酎がどのように造られているかという知識体系を背景に、供出されたお酒の特徴を一つずつ整理していく作業です。
- 日本酒は「アル添の有無」「酒米の品種」「酒母の種類」「酵母の特性」の4軸に分解して検証する
- 焼酎は「主原料」「常圧か減圧かの蒸留方法」「アルコール度数」の3点に着目する
- マークシートの用語選択は、特定名称や酒質スタイルごとの調和を意識して選ぶ
- 8週間の計画例に沿って、1つの軸ごとの比較から4種同時比較へと段階的に訓練を進める
- 試験当日は最初の数分で全体を大まかに把握し、タイムテーブルに従って冷静にマークする
製法ごとの特徴が舌と鼻にどのように現れるのか、その設計図を頭の中に明確に描いておくことで、どのような組み合わせが出題されても落ち着いて対処できるようになります。日々の比較テイスティングを丁寧に積み重ねて、万全の準備で本番に臨んでください。
参考文献・情報源
📝 更新履歴
- 2026年4月21日:初版公開(2025年度実施結果と2026年度試験構成を踏まえて執筆)
- 2026年9月17日:本文と関連情報を見直し、説明を整理
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