酒ディプロマの重要分野と学習ポイント【2025年度の学習資料】
この記事を監修
平沼柊哉
酒学道場 代表・J.S.A.正会員
この記事の結論
- SAKE DIPLOMA一次試験で安定して得点するには、日本酒の醸造工程に加えて地理的表示(GI)や焼酎・泡盛の規定を正確に整理しておく必要があります。
- 配点や合格基準は公式に非公開ですが、CBT方式では幅広い分野から出題されるため、苦手分野を作らない網羅的な学習が有効です。
- 単純な用語暗記にとどまらず、数値の条件や工程ごとの目的を理解することが問われます。
- 問題演習を通じて誤答の傾向を把握し、教本の改訂情報や産地指定の動向を定期的に確認することが着実な合格への近道です。
この記事の対象読者
- SAKE DIPLOMA一次試験の重要分野と学習ポイントを把握したい方
- GI(地理的表示)や焼酎・泡盛など、整理が追いつきにくい分野の要点を確認したい方
- CBT方式の出題形式に合わせた効果的な勉強法を知りたい方
SAKE DIPLOMA一次試験で安定して得点を重ねる鍵は、日本酒の醸造工程という基礎を固めたうえで、地理的表示(GI)と焼酎・泡盛の各規定を正確に区別して覚えることです。公式な配点や合格ラインは公表されていませんが、コンピュータ画面で解答するCBT方式では、教本全域から満遍なく出題されます。一部の分野を捨てずに要点を整理しておくことが、本番での確実な得点につながります。
そもそも酒ディプロマ(SAKE DIPLOMA)とは?
SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)は、一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が認定する、日本酒と焼酎に特化した専門資格です。飲食業界のプロフェッショナルだけでなく、日本酒文化への理解を深めたい愛好家まで幅広く受験しています。
試験は一次試験と二次試験に分かれています。一次試験はテストセンターのコンピュータで解答するCBT方式(60分、100問)で実施されます。一次試験に合格すると、テイスティング(30分)と論述試験(20分)で構成される二次試験へ進む流れです。
一次試験を通過した翌5年間のうち3回までは一次試験が免除される制度もあります。まずは最大の関門となる一次試験の全体像を把握し、効率よく知識を定着させることが大切です。
酒ディプロマ一次試験の出題傾向と近年の特徴
主な出題分野と学習の視点
一次試験の配点は非公開ですが、出題対象となる分野は公式教本の章立てに沿って幅広く設定されています。

| 分野 | 主な出題内容 | 学習するポイント |
|---|---|---|
| 醸造(製法) | 特定名称酒の要件、酒母、製麹、もろみ管理 | 最も基礎となる土台。工程の流れと目的を整理する |
| 焼酎・泡盛 | 原料、麹の種類、単式蒸留機、産地指定 | 配点比率が高い分野。日本酒との製法の違いに注目する |
| 日本酒の歴史 | 古代から現代までの酒造りの変遷、法改正 | 時代ごとの技術革新(生酛系、速醸酛の登場など)を時系列で追う |
| 酒造好適米 | 主要品種の特性、交配系統、主産地 | 心白の形状や交配親の組み合わせを正確に覚える |
| 各都道府県・GI | 各地の気候風土、酒造りの特徴、GI認定基準 | 地理的表示の指定要件と各産地の代表銘柄・原料米を押さえる |
| テイスティング理論 | 外観・香り・味わいの表現語彙、温度管理 | 二次試験にも直結する官能評価の用語と定義を一致させる |
日本酒の醸造に関する知識は全問の基礎を支える土台ですが、焼酎や各地のGIに関する問題も大きな割合を占めます。日本酒の知識だけに時間を費やし、教本後半の焼酎や産地各論を後回しにすると、全体の得点が伸び悩む原因になります。
問われ方の変化と対策の注意点
用語の意味だけでなく、数値や関連する条件も確認しておきましょう。

第一に、複数の選択肢の中から正しい組み合わせを選ばせる問題です。「生酛系酒母の特徴として正しいものを2つ選べ」のように、周辺知識まで正確に把握していないと正解を絞り込めない設計になっています。
第二に、規定値や割合などの数値を正確に問う問題です。精米歩合の基準値や、特定名称を名乗るための白米重量に対するこうじ米の使用割合(15%以上)など、曖昧な記憶では迷いやすい数字が問われます。
第三に、新しく指定された地理的表示や海外への輸出状況など、教本の改訂部分や時事的なトピックからの出題です。古い参考書や過去の知識だけに頼っていると失点しやすいため、現行教本の記載に合わせた知識の更新が欠かせません。
重点的に対策すべき5つの分野
1. GI(地理的表示)の制度と指定要件
地理的表示(GI)は、特定の産地で一定の基準を満たして製造された酒類について、その産地名を独占的な財産として名乗ることを認める制度です。国税庁長官の指定によって保護されます。

日本酒のGIとしては、「白山」「山形」「灘五郷」「はりま」「三重」「利根沼田」「萩」「山梨」「長野」「滋賀」「佐賀」「新潟」などが指定されています。全国包括的な「日本酒」という指定も存在します。
試験対策としては、単に指定地域の名を覚えるだけでなく、各GIが定めている独自の基準を比較して整理することが大切です。
- 原料米の指定:指定地域の米のみに限定されているか、特定品種が指定されているか
- 水や製法の規定:指定地域の水を使用しているか、特定の醸造方法が義務付けられているか
- 品質基準:特定名称酒の範囲や官能審査の有無
また、単式蒸留焼酎のGI(壱岐、球磨、琉球、薩摩)と日本酒のGIでは、原料や製法に関する基準の成り立ちが異なります。両者の定義を混同しないよう整理しておく必要があります。
2. 焼酎・泡盛の製法と定義
焼酎分野は教本の中でも独立した章としてまとまっており、日本酒とは異なる専門知識が問われます。「日本酒の試験だから」と学習を後回しにすると大きく失点しやすい領域です。

押さえておくべき主要項目は以下の4点です。
- 麹菌の種類と特性:黒麹菌(クエン酸生成力が高く温暖な気候に適する)、白麹菌(黒麹の変種で扱いやすくすっきりした酒質に向く)、黄麹菌(日本酒で主流、クエン酸を作らないため温度管理が厳格)の3種について、性質と主な用途を把握します。
- 蒸留方法の違い:常圧蒸留(大気圧下で約90〜100℃で沸騰、原料由来の豊かな風味や油分が抽出される)と、減圧蒸留(機内を減圧して40〜50℃前後で沸騰、軽快で華やかな酒質になる)の仕組みと香味の違いを対比します。
- 主原料と産地:さつまいも(鹿児島・宮崎)、大麦(長崎・大分)、米(熊本・球磨地方)、黒糖(鹿児島県奄美群島限定)など、原料ごとの主産地と仕込みの特徴を整理します。
- 泡盛の特徴:原料にタイ米(インディカ米)を使用し、米全体を黒麹菌で製麹する全麹仕込みを行う点、単式蒸留で製造する点、全量が3年以上貯蔵されたものだけを「古酒(クース)」と表示できる点などを押さえます。
3. 日本酒の海外展開と輸出動向
日本酒の輸出金額や数量は長期的な拡大傾向が続いており、教本でも国際市場に関する記述が充実しています。
学習のポイントは、輸出先上位国の傾向(アメリカ、中国、香港など)や、各国での日本酒の認知・流通状況です。また、海外での日本酒製造の動きや、J.S.A.が実施する国際資格「SAKE DIPLOMA International」(英語による認定試験)の位置づけにも目を通しておくと、現代の日本酒を取り巻く市場環境を立体的に理解できます。
4. 日本酒の醸造工程と特定名称酒の基準
醸造工程は、酒造りの仕組みを理解するための基礎分野です。各工程の目的と科学的な変化を正確に理解しておく必要があります。

確実に整理しておくべき項目は以下の通りです。
- 特定名称酒の要件:精米歩合、使用原料、香味・色沢の要件です。本醸造酒系(醸造アルコール使用)と純米酒系(米、米こうじ、水のみ)の区分、精米歩合による区分(吟醸・純米吟醸は60%以下、大吟醸・純米大吟醸は50%以下、本醸造は70%以下)を即座に引き出せるようにします。こうじ米使用割合は全特定名称酒で15%以上です。
- 酒母(酛)の分類:乳酸を添加して短期間で安全に酵母を培養する「速醸系酒母」と、自然の乳酸菌を取り込んでじっくり育てる「生酛系酒母」の違いを把握します。生酛系における山廃酛(山卸廃止酛)は、蒸米と麹を櫂棒ですり潰す「山卸(酛すり)」の作業を省略した製法であり、仕込み水の浸出や酵素の作用を利用して同等の効果を得る仕組みです。
- 酵母と発酵香:きょうかい酵母(協会系酵母)の各号の特徴や、吟醸香の主成分であるカプロン酸エチル(リンゴ様の華やかな香り)と酢酸イソアミル(バナナ様の穏やかな香り)を識別できるようにします。
- 三段仕込み:もろみの急激な温度変化や雑菌繁殖を防ぐため、初添(はつぞえ)、仲添(なかぞえ)、留添(とめぞえ)の3段階に分けて仕込む工程です。初添の翌日に酵母の増殖を待つ「踊り(おどり)」と呼ばれる休止日を挟む点も基本事項です。
5. 酒造好適米の品種特性と交配系統
酒造好適米(醸造用玄米)は、一般の主食米と比べて大粒で心白があり、タンパク質や脂質が少なく、吸水性や消化性に優れる特徴を持ちます。
試験では、全国生産量上位の品種と、各県の育成品種に関する知識が問われます。
| 品種名 | 主な生産地 | 交配の組み合わせ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 山田錦 | 兵庫県 | 山田穂 × 短稈渡船 | 心白の発現率が高く、酒造好適米の代表格。大吟醸酒など幅広く使用される |
| 五百万石 | 新潟県 | 菊水 × 新200号 | 早生品種で寒冷地に適する。すっきりとした端麗な酒質に仕上がりやすい |
| 美山錦 | 長野県 | たかね錦の放射線突然変異 | 耐冷性に優れ、東北や甲信越で広く栽培される。キレの良い酒質を生む |
| 雄町 | 岡山県 | 在来種(選抜固定) | 現存する多くの酒造好適米のルーツ。米の旨味を引き出しやすい |
主要4品種の主産県と交配親の組み合わせは、試験直前までに確実に一致させておく必要があります。さらに「出羽燦々(山形県)」「吟風(北海道)」「華想い(青森県)」など、各都道府県が独自に開発したオリジナル酒米と地域の結びつきも整理しておくと得点力が安定します。
一次試験に向けた3つの学習戦略

戦略1. 練習問題でCBT形式の選択肢に慣れる
教本の文章をただ眺めているだけでは、試験本番で選択肢のトラップを見抜く力は身につきません。
CBT方式では、誤った記述の中に「もっともらしい専門用語」が混ぜ込まれて出題されます。問題演習を通じて「どの部分をすり替えて誤文を作っているか」という出題のパターンを体感することが有効です。
オンライン問題集の「酒学道場」などを活用し、単元ごとに問題を解いて知識の抜け落ちを確認する習慣をつけましょう。繰り返し問題を解くことで、教本を読む際にも「ここが問題として問われそうだ」という視点を持てるようになります。
戦略2. 分野別の正答率を可視化して苦手箇所を埋める
試験範囲全体を同じ熱量で周回するのは、限られた時間の中では非効率です。正答率を分野ごとに集計し、自分が点数を落としている領域を数字で確認してください。
たとえば、醸造工程の正答率が8割を超えている一方で、焼酎やGIの正答率が5割前後に留まっているなら、以降の学習時間は後者へ重点的に配分すべきです。得意分野をさらに伸ばすよりも、未着手の苦手分野を標準的な水準まで引き上げるほうが、合計得点は短期間で大きく伸びます。
戦略3. 公式情報で教本の改訂内容を定期的に確認する
酒類に関する法改正やGIの新規指定は、試験範囲に直接影響します。特に直近で追加された認定地域や基準の変更点は、出題者側にとっても新しい問題を作りやすいテーマです。
学習期間中は、月に一度程度、日本ソムリエ協会の公式サイトや国税庁の酒類業関連ページを確認する習慣をつけておくことをおすすめします。
焼酎分野の具体的な整理法は酒ディプロマ焼酎対策で、一次試験後の官能評価対策は二次試験テイスティング完全ガイドで詳しく解説しています。
次の行動へ向けて
SAKE DIPLOMA一次試験の学習は、教本の厚さに圧倒されがちですが、重要分野から順番に骨格を作っていけば確実に知識がつながります。
まずは特定名称酒の要件と醸造工程の全体像を固め、そのうえでGI指定や焼酎の各論を肉付けしていきましょう。早い段階で練習問題を解き始め、自分の現在の理解度と弱点分野を客観的に把握することから学習をスタートさせてください。
よくある質問
酒ディプロマ一次試験の出題傾向にはどのような特徴がありますか?
用語単体の丸暗記だけでなく、複数の特徴を正しく組み合わせる問題や、精米歩合などの正確な数値を問う問題が出題されます。日本酒の醸造工程に加えて、GI(地理的表示)や焼酎・泡盛分野も幅広く問われます。
酒ディプロマ一次試験の配点や合格ラインは公表されていますか?
一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)から分野ごとの配点や合格ラインは公式に公表されていません。特定の分野だけに偏らず、教本全体の知識をバランスよく網羅しておくことが大切です。
GI(地理的表示)とはどのような制度ですか?
地域の共有財産としての産地名を保護し、一定の基準や原材料の要件を満たした酒類だけがその産地名を名乗ることができる制度です。国税庁長官の指定により運用されています。
独学でも一次試験に対策できますか?
公式教本の通読に加えて、CBT方式を想定した練習問題を活用することで独学での対策が可能です。誤った選択肢のパターンに慣れ、自分の苦手な分野を把握しながら進めるのが効果的です。
📝 更新履歴
- 2026年1月4日:初版公開
- 2026年9月17日:本文と関連情報を見直し、説明を整理
関連記事
SAKE DIPLOMAの一次試験免除制度まとめ|有効期限・回数と再出願の手順
SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)の一次試験免除制度について解説。免除期間(翌5年以内・最大3回)の数え方、再出願時の注意点、過去の受験記録の確認項目、2026年度実績の受験費用まで整理しました。
酒ディプロマ教本の効率的な読み方|ページ順に頼らず重要分野から攻略する学習手順
SAKE DIPLOMAの教本はページ数と試験での重要度が一致しません。1ページ目から通読すると後半の焼酎・泡盛にたどり着く前に失速しがちです。醸造や焼酎を優先する読む順番、問題演習と教本の往復手順、二次試験の論述を見据えた活用法を解説します。
日本酒の資格を比較|唎酒師・SAKE DIPLOMA・日本酒検定の内容と費用
日本酒の資格を、学習内容・認定方法・団体へ支払う費用で比較します。唎酒師、SAKE DIPLOMA、日本酒検定の違いを知り、目的に合う学び方を選びましょう。
